ナルコレプシー

ナルコレプシー

眠気日本睡眠学会のガイドラインをもとにナルコレプシー診療について情報を提供します

ナルコレプシーの基本的特徴

第一に耐え難い眠気あるいは居眠り発作が反復する状態が三ヵ月以上慢性的に持続していること、
第二には、強い情動的な刺激が加わった際にがくんと力が抜ける発作=情動脱力発作が出現すること、
第三には、眠りから目覚め、あるいは目覚めから眠りの変わり目にレム睡眠が先行して繰り返し出現することの3点です。
好発年齢は10代から20代前半で、40歳以後の発症は稀です。

ナルコレプシーは多大な社会的不利益をこうむりやすいので医療支援が不可欠です。
ナルコレプシーの有病率の平均は 2000人に1人(0.05%)とされています。
日本人の有病率 0.16%(600人に1人)は世界で最も高く、米国やEUでは、0.04%~0.06%という報告があります。
性差はないと考えられていますが、病院で治療を受けている患者は男性の比率が高くなっています。

ナルコレプシーの原因

1998年に発見された神経ペプチドであるオレキシンは、ナルコレプシーの病因に決定的な役割を果たすものです。
ナルコレプシー患者では、髄液中でオレキシン値が低値ないし測定限界以下です。
髄液のオレキシン値低下は睡眠障害国際分類第2版においてナルコレプシーの補助診断基準として採用されています。
患者の死後脳で視床下部にあるオレキシンニューロンが脱落していることも明らかにされています。

ナルコレプシーの症状について

睡眠麻痺(金縛り)と入眠時幻覚(短い睡眠でも夢を見る)はナルコレプシーによく見られる症状です。
ナルコレプシーの4主徴は睡眠発作、脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚です。

眠気/居眠りについての特徴を列挙します。

  • 強い睡眠不足が無い限り、朝の起床時は正常人と同水準の眠気です。
    しかし、その後に眠気は強まり、昼前から午睡ゾーンにおいて強くなります。
  • 居眠りは断続的に複数回生じることがあります。
  • 持続は短く、5~15 分程度で、居眠りの後に眠気がすっきりすることもあります。
  • 居眠りの後、数時間のうちに眠気が再昂進し、居眠りを繰り返します。

眠気が何を指しているのかが問題です。
言葉どおり眠気であることもありますが、家庭・学校・職場等での不適応が眠気として表現されることもあります。
また眠気という言葉を使わずに、疲れやだるさという形で自覚されることもあります。
本人に眠気の自覚が乏しい場合は、家族からの情報も重要です。
小児例では、眠気を自ら適切に訴えることができない場合があります。
眠気そのものは目立たずに、不機嫌や集中力低下、時には多動といった形で現れることがあるため注意が必要です。

診断について

眠気の水準、情動脱力発作を含めたREM関連症状の性状、ならびにこれらの症状の経過を明らかにすることが必要です。
調べておくべき必須項目は次のごとくです。

  1. 確認が必要な症状
    発症時期と経過
    眠気の性状と程度は
    平日だけか?週末や休暇時期もあるのか?
    睡眠時間はどのくらいか(平日、休日ともに)
    睡眠-覚醒パターン
    いびきの有無
    身体疾患・精神疾患の有無
    服用薬剤内容の確認
  2. 眠気の程度の確認
  3. 睡眠日誌(少なくとも2週間、できれば4週間分)
  4. 心因性要素の把握(仕事・学校のある日に限って起きられないなどの現象の有無)

ナルコレプシーの確定診断

日本睡眠学会は、ナルコレプシーの診断にあたって、ICSD-2の使用を推奨しています。ICSD-2では「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」と、「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」に分類されています。
特に「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」では、睡眠ポリグラフ検査(PSG)、反復睡眠潜時検査(MSLT)の実施は不可欠です。
睡眠麻痺や入眠時幻覚が健常者にも出現しうること、他の過眠疾患の合併や鑑別の必要性を総合的に考慮すると、情動脱力発作の有無によらず、PSGとMSLTの実施は行うべきです。
身体疾患による症候性のナルコレプシーもまれに存在します。
それらは、視床下部を含んだ占拠性病変を来す、脳腫瘍や多発性硬化症、パーキンソン病などです。
小児では、Niemann-Pick Type C での症候性ナルコレプシーの報告があります。

治療について

1.治療の目標;

比較的若年期に発症する慢性疾患であることに十分配慮し、最小限の薬剤で効果を得て、副作用と依存形成を抑制することです。
眠気による社会生活への不利益(仕事、学業の能率低下、運転等の危険性など)を最低限にとどめる水準を目指すことが目標となります。

2.過眠症状に対する治療

1)中枢神経刺激薬の投与

三種の薬剤が用いられています。
副作用の出現には個人差が大きいので注意が必要です。
三薬剤とも服用後一旦眠気が亢進した後に、覚醒水準上昇をきたす、いわゆる奇異反応を呈する可能性があります。
根治的な治療は現時点では存在せず、あくまで対症的な治療なので、中断すると元の眠気水準に戻ってしまうことを承知していただくことが前提です。

モダフィニル(モディオダール)

依存性を回避するという点から第一選択です。
半減期が長く(約 12 時間)朝一回の服用でよい。
100mgから始めて、症状に応じて保険適用量の上限である300mg/日までの増量が可能です。
副作用としては、服薬初期に頭痛が生じることが比較的多く、次いで動悸、悪心、食欲低下が出現することがあります。

メチルフェニデート(リタリン)

半減期は7時間だが、実効時間は4時間程度で、保険適用上1日用量60mgが上限とされています。
実効時間を考慮して、1日1~3 回に分割して服用されます。
長期連用期間中における依存・乱用を含めた不正使用の問題により、「リタリン登録医」のみが処方可能となっている。
最重症例を除くと、極量を用いることは避けるべきである。

メチルフェニデートの主な適応は

A.モダフィニルを保険適用量上限まで投与しても十分な改善が得られず、社会生活上問題となる眠気・居眠りが残遺する場合
B.すでに長期間本剤を服用していて、他剤への置換が困難なケース
C.副作用のために他剤使用が困難か、増量が不可能な場合です。MSLT により、診断・重症度を正確に把握しておくべきである。
依存形成を避けるために、活動の少ない休日などに休薬日を設ける。
投与開始初期に生じる頭痛、消化器症状、ほてり感、動悸などの発現にも注意すべきである。

ペモリン(ベタナミン)

ぺモリンの半減期は 12 時間、1日用量は150mgが上限です。
半減期が比較的長いので、本剤も朝1回の服用で効くことが多い。
本剤投与下では、メチルフェニデートの項で示した副作用以外に、肝障害が生じる危険性があり、投与期間中の肝機能の追跡が必要です。

2)生活習慣の見直し

十分な夜間睡眠をとり、規則的な生活を心がけるよう指導する。
昼休みなどに積極的に短時間の昼寝をすることが午後の眠気の軽減にある程度有効であるし、生活スケジュール上可能であれば、数時間に1回ずつ計画的に午睡を取ることも推奨されている。
カフェインも適宜摂取して良い

3.情動脱力発作を含めた REM睡眠関連症状に対する治療;

保険適応が認められた薬剤はないが、抗うつ薬が REM 睡眠を強力に抑制するので、情動脱力発作や入眠時幻覚、睡眠麻痺といったREM睡眠関連症状の抑制の目的で投与される。
治療薬の候補となるのは、少量の三環系抗うつ薬(クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]いずれも 10~75mg/日程度)、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) (パロキセチン[パキシル]10~30mg/日、フルボキサミン[ルボックス、デジレル]25~100mg/日程度)、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) (ミルナシプラン[トレドミン]25~75mg/日程度))などである。
過去の治療経験では、三環系抗うつ薬の効果が最も安定しているようだが、便秘や口渇などの副作用が多いこと、連用により効果が減弱する可能性がある点が弱点となる。
治療薬選択にあたっての基準はなく、患者の年齢や身体合併症などの有無などからその都度判断していかねばならない。
なお、薬剤を急速に中断すると、反跳現象により、症状が急速に増悪する可能性があることに留意したい。

4.睡眠分断への治療

ナルコレプシーでの夜間睡眠問題は、入眠障害よりも、睡眠の安定が悪く中途覚醒が多い点である。
中途覚醒を減らす目的でベンゾジアゼピンないしそのアゴニストの睡眠薬を使用するが、超短時間作用型よりは、短時間型ないし中間型作用の薬剤が用いられることが多い。
睡眠維持障害の程度、ないしは翌朝への持ち越し効果の程度を勘勘案しながら薬剤・用量設定すべきである。

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